山中慎介がめった打ち!涙の陥落!

~盛者必衰のことわりか。結果以上の完敗。

 

 いつまでも勝者でいつづける事は出来ない。そんな世の中の道理をこれほど情け容赦なく見せつけられた試合も、久々だ。 WBC世界バンタム級王者山中慎介(34=帝拳)が挑戦者の同級1位ルイス・ネリ(22=メキシコ)との戦いの前に、CMで「いつまでもかつこいい父親でありたい」と言葉を発していたが、ボクシングというスポーツほどそれが適わないものもないだろう。子が物心つくころ、父は、大概下り坂なのだから。

 予兆はあった。前回の試合も、前々回の試合も、不用意にパンチをもらう回数が増えてきていた。DF力の衰えを心配されてたが、この試合は、図らずもそれが的中してしまった。

 1ラウンドにもらった大振りのフックのあと、両足が一瞬そろった。それを見た時、「効いているぞ」と思った。その後も、パンチを当てるも、ルイス・ネリは下がらず、強烈なパンチと共に前に出てきた。得てして、こんな時、「パンチはないぞ」と感じるという。つまり、攻撃力にも、明らかな衰えが忍び寄っていたのか。4回、ネリが怒濤の攻撃。山中は、自分では「ガード」をあげているつもりなのだが、顔を出しているだけ。クリンチに入るスピードもないため、クリンチで逃げることもままならない。最後は「めった打ち」状態。息子が一言「いじめだ」とつぶやくほど。タオルも当然だった。

  しかし、山中の12回連続、しかもたぐいまれなKO率は、見るものに夢をみさせてもらった。十分「かっこいいお父さん」ではなかったか。再起を臨む気持ちもあるが、まずはゆっくり、今の自分の「状態」を、自分と話しながら、次の1歩を考えて欲しいと思う。山中はリング上で号泣。しばらくたっても涙は収まらず、関係者に支えられながらリングを後にしたが、ボクサーが、リングで負けて号泣した姿を見るのも久々である。

 「かわいそうだなあ」とも思ったが、どこかで「かっこいいなあ」と思う自分もいたのも確かだ。

素晴らしいファイトを有り難う!

 また、仕事が始まる。疲れる・苦しい日々も始まるだろうが、「ファイト」を灯して頑張っていこうと思う。