ゼリア新薬の22歳男性傷心の自殺。いじめは人間の根幹にある闇か。

     ~発見・撲滅の難しいいじめ。言えない、「原因は両方」に。 

 この夏休み。いじめでまた高校生が自殺している。いじめはなぜなくならないのか。原因が多様である分、撲滅は難しい。そして。その「経験」は成長しても継続する。まさに人間の「闇」である。

 いくつかの例をあげよう。ある中学校のAという少女。2年生の学級編成後しばらくして不登校に。悪口や仲間はずれをされるから、という。では、この少女は、何かの理由で突然仲間はずれや悪口を言われるようになったのか。実は、小学校6年生の頃からだ。中一の担任が、家庭訪問の折聞いたことによると、理由は「金銭問題」だという。貧しい家庭(母子家庭)なので、「大人の事情」によるのか、と思ってたらしい。そんな事情をおもんがかり、1年次の担任は、自分から仲間に入らないその子を、自然と見守り、毎日、冗談始め、ちょっとしたよい事も見逃さず、さりげなくほめ続け(周囲の生徒に聞こえるように)、時には、リーダー格で信頼できる生徒に、様子を来たり、側に置き、配慮を頼むような事もあった。その甲斐あって、徐々に笑顔も増え、その年も終わりになった頃、突然、班内でとんでもない事を言い始めた。「私、小6で先生の机の上にあったお金を、盗んじゃったの。それで、いっぱいいじめを受けた」。

 それが、教師の真ん前の班で、給食中であったため、昼休みに事情を聞き、解決した事件であることを確認し、むやみやたらと「過去」は話すものではない事を諭した。

 それから1週間ぐらいして、級友の教科書が事件が起きた。朝方であったと推察できるため、学年団が見張るっていると、また、教科書がゴミ箱へ。学年棟にはA他3~4名。事情を聞いても、Aは認めなかったが、Mから「悪口を言われている」と言う。原因は「お金の話」だ。

 この件では、「お金の話」をAが話さねば、起こらなかった。そして、2年次、悪口と併せ、この「お金のうわさ話」が広まることとなる。

 次の例は、別の中学校の女生徒の話である。この生徒は、学力も中くらい、難しい新書などを数多く読むなど、ある意味博学である。問題は、お風呂に入らないことである。家族も頓着しない。姉の卒業式に、父はジーパンでくるような人達である。夏場、その体臭のひどさに、陰口がはじまりかけた。そこである生徒が女性の担任に相談。とちあえず学校の身障者要のシャワー室でシャワーをあびさせたりしていたが、それでは収まらず、家庭に相談しても、お風呂が壊れてしばらく無理です、など埒があかない。担任は、仕事を早く切り上げ、管理職に相談後、近くの銭湯に連れて行き、一緒に入り、身体を洗ってあげたという。その際の「桶のお湯」は真っ黒だったとか。担任の機転・人間性により、小学校時代と同じ事態にはならなかったが。・・・今年、入学した弟は、姉より「ひどい」らしい。

 このような極端な例でなくとも、偏見なしに、その事情を探っていけば、いじめの原因は「双方」にあることが多い。ただ、その観察眼の肝がどうしても「担任の目」に限られてしまうのが難点でもある。そして、基本、いじめの指導は、加害者のみになりがちである。片方だけの指導は、その根っこを隠し、問題を解決しないまま、「抑える」指導になりがちである。人間的には、加害者・被害者両方の心の治癒がなされないまま。・・・「死」という最悪の選択をさせた場合は、また別だが。どんな時も、どんな事情でも、「自ら死なせてはいけない」のである。

 いじめは、「大人社会」でも普通にある。セクハラ・パワハラ・・・。それが、常識でもある。歴史をひもといても、軍隊にはいじめがつきものである。日本軍・自衛隊

 「ゼリア新薬の22歳男性傷心の自殺」は、まさにいじめでなくて何だろう。人は誰でも隠しておきたい「負の側面」がある。それが生きるということだ。それを、理由無く、権力で公開させる。公開処刑そのものだ。それを認められない会社の上層部も、この講師も、少年時代・青年時代の過去に「いじめ」に加担した「経歴」があったんではないかと邪推したくなる。

 

 『原告側によると、Aさんが亡くなるまでの経緯は次のようなものだ。

 Aさんは早稲田大学を2013年3月に卒業後、4月からゼリア新薬工業で働き始めた。

  新入社員研修は4月1日から始まり、8月9日まで続くはずだった。この間、Aさん

 は会社の指定した宿泊施設に缶詰状態だったが、5月18日に異常行動があったとし

 て帰宅を命じられた。そして、その途中、東京都新宿区内で自死した。労基署が注

 目したのは、4月10日〜12日の3日間、ビジネスグランドワークス社が請け負って実

 施した「意識行動改革研修」。その中で、Aさんの「吃音」や「過去のいじめ」が

 話題になった。講師から過去の悩みを吐露するよう強く求められた上で、Aさんは

 こうした話をさせられていたという。

  Aさんは、研修報告書に、次のように書き残していた。

 「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショック

 はうまく言葉に表すことができません」

 「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、 

 ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になってその後何をどう返答したのか覚えていま

 せん」

「涙が出そうになりました」

一方、研修の講師は、Aさんの報告書に赤字で次のようなコメントを残している。

「何バカな事を考えているの」「いつまで天狗やっている」「目を覚ませ」』

  原告たちの聞き取りに対し、ゼリア新薬の新人研修担当者は、「自分も受講した

 ことがある」として、次のように供述したという。

「軍隊みたいなことをさせる研修だなと感じました」

「いつも大きな声を出す必要があり、機敏な動きを要求され、指導員が優しくない」

「指導員は終始きつい口調」「大きな声で命令口調だということです」

「バカヤローといった発言も多少はあった」

「最終的には感極まって涙を流す受講者も出るような研修」

「研修会場はある種異様な空間でした」

「個人的にはもう受けたくない」

「途中で体調不良者が出ることもあります」

(バズフィード・ジャパン) 

 何度も、どこかで、聞いたような話だ。こういう人達は、会社名を変え、何度も繰り返す。そんな講師を採用する、この会社は、ある意味、狂っている。

 ゼリア新薬のキャッチフレーズが「健康作りは幸せ作り」。なにおかいわんや、である。第1四半期の連結業績の中で、営業利益、経常利益が、60パーセント以上減、というのも影響しているかも知れないが。上層部には、断固としたペナルティーを科されることを望む。「いじめは絶対に行けない」「そんな事情でも、誰かを死なせてはいけない」、という学校現場への文科省の決まり文句が、言葉だけではないことを、未来を担う子供達に示せるように。